萌える近代文学ー『孤島の鬼』江戸川乱歩

江戸川乱歩の描く長編ミステリー。
同性愛要素があります。

乱歩といえば明智小五郎などのミステリーで有名ですが、実は乱歩はエッセイ内で初恋は同性と書いていたり、男色について研究もしていたりしている人物です。

キンドルアンリミテッド↓でも読めます。

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あらすじ

主人公の箕浦は、職場で知り合った初代と恋人になるが、まもなく初代に求婚者が現れる。
それは学生時代の先輩・諸戸だった。
そんなある日、恋人の初代が殺される。
箕浦は死の真相と犯人を探るべく、友人の探偵・深山木と調査を始めるが…。

概要

乱歩の長編小説でも指折りの作品と言われているだけあって、話自体が文句なしに面白いです。

私も面白くてあっという間に読んでしまいました。

奇妙な島がでてくる点は、乱歩の中編小説「パノラマ島綺譚」↓にも似た要素がありますが、今作はさらに殺人事件・人体改造・同性愛と多くの要素が入り混じって、見ごたえのある1冊となっています。


パノラマ島綺譚も面白いのでおすすめです。

萌えどころ–主人公が鬼である

(※物語の核心は避けていますが、微ネタバレしていますので注意)

個人的な見どころは、才色兼備の美青年・諸戸先輩

彼はまあ簡単に言えば主人公の箕浦に片思いしています。

しかしとにかくこの主人公の「私」こと箕浦は、天然小悪魔といいますか。

内気で友達も少ないのになぜか有能な先輩たちに次々と好かれて、色々と助けてもらう少女漫画の主人公的な存在です。

箕浦は、高貴な知性派美青年・諸戸や、天才肌の奇人中年・深山木といった有能な先輩達に愛され、一から十まで助けてもらいながら物語は進んでいきます。


主人公の箕浦は、先輩たちに好かれているのですが、それを本人は自覚しています。

しかも箕浦本人が地の文で「昔から先輩たちに好かれるんだけど、僕って美形なのでは?」(意訳)とか書いてるから強い。
序盤から全力のこの主人公の最強っぷりに正直少し不安になりました。

他にも体洗ってもらったり、手繋いだりといったスキンシップを「私は意識してやって」いて、そこから伝わる愛情をやぶさかではないと思いながらも、決して彼の手を握り返すことはしないと過去の腹黒っぷりを回想する箕浦。

暗闇に諸戸と箕浦がふたりで閉じ込められて、絶体絶命の危機に瀕したときも、
とにかく諸戸が脱出方法を模索するなどまじめに頑張ってる中で、怖いからと言って、諸戸の体をさぐって、すり寄っていきます。

そのくせ諸戸が「もうだめだ、一緒に死のう」と迫って来たら、ドン引きしてけだものだの蛇だの海坊主だの呼ばわりをします。

もうお前こそが鬼かと。

他にも箕浦は、探偵の深山木先輩に事件の相談をしているときも、自分の態度が相手にもたらす影響を自覚したうえで話していました。

心から愛していた恋人の死について話している間も、

「僕が甘えると先輩が喜ぶ」と心の中で思っている小悪魔力。
いっそ怖い。

さらにこのひと、初代の仇を取ると意気込んで孤島に向かったわりに、そこで出会った女の子に一目惚れ、挙句「初代の導きだ」と言い出します。(そう思った理由はありますが)

そんなわけで、私は全編通して主人公の最強天然腹黒っぷりに恐れをなしてしまい、
全力で諸戸先輩を応援してしまいました。

諸戸をひいきした目線で見ると、
むしろ孤島の鬼って箕浦のことなのでは?
と思いたくなります。

まとめ

怪奇ミステリーなのでちょっと怖い描写もありますが、殺人事件自体は割とあっさりしている印象。
乱歩は他にももっと怖い作品がいっぱいあるので、感覚が麻痺している可能性もあります。

ラストの諸戸がまた切ない。

諸戸が同性愛者になったのには悲しい過去があったりするのですが、とにかく彼目線で読んでしまった私は、諸戸の健気っぷりと箕浦の非道っぷりに涙したものです。

そのあたりに突っ込みながら読むのもまた一興。

ちなみに乱歩自身は「探偵小説四十年」↓の中で、同性愛要素について「筋を運ぶ上の邪魔ものにさえなった」と述懐しています。

余談ですが、リブレから出ているこれ↓の表紙がとても好きです。

(※諸戸・箕浦のモデルと噂される人物を書いた小説のレビューはこちら

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